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地図と赤ペンを持って、一丁目から順番に歩く。
ただ歩くだけ。
近くに女がいれば、匂いで絶対に分かると思った。
顔も名前も年も分からない。
でも、いい女に違いない。
俺にはその確信があった。
時折、女の残り香をかすかに感じることがあった。
きっと、この道を通ったことがあるんだろう。
俺は女の残り香をたどって、その近くを重点的に探すことにした。
そして、ある日、見つけた。
まだ夏休みは半分以上残っている内に、あっけなく、女を見つけた。
女はスーパーからエコバッグを下げて出てきた。
美人……かどうかはよく分からないが、とにかくいい女だ。
俺と目が合う。
でも、まったく知らない顔でスタスタと歩いていく。
俺は焦った。
目が合えば、女にも俺が分かるのだと思っていたからだ。
俺は女の後を付けた。
俺をストーカーと言った裕也の顔が浮かんだが、ここで見失うわけにはいかなかった。
女は細い路地に入って、古臭いアパートの階段を上がっていく。俺は足音を隠しもせずに後ろからその階段を上がって行った。
女がポケットから鍵を取り出す。以前に拾ったリボン付きのキーホルダーと同じものだった。
女がガチャリと鍵を開けて、ドアを開ける。
俺は走った。
女に飛び掛かるようにして一緒に部屋の中に入り、その細い体を押し倒した。
女がきゃっと悲鳴を上げる。
レイプする気は無い。
でも食べたい。
この女を食べたい。
俺は女の白い首にがぶりと噛みついた。
女がまた悲鳴を上げる。
そして。
「痛いだろ! このばか!」
女が俺の頭を殴った。
しかも、でっぱっているこぶのところを。
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