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「ねぇ。」
コンコンとドアを叩く音がして、聞き慣れた声が
ご主人さまを呼ぶ。
その瞬間、膝の上で寛いでいたオレを床に慌てて
下ろして急に勉強机へと向かった。
今の今までご主人さまも寛いでいたくせに。
じっとそのソワソワと落ち着きのない顔を見上げる
が、ご主人さまはもうオレのことなんて眼中にない
みたいだ。
「何だよ。」
いかにも不機嫌そうな声で返事をする。
いつの間にか机の上には教科書ってやつを広げて。
その返事を合図にドアが開く。
すると、この家によくやって来る確かご主人さまが
"幼なじみ"と呼んでいた女が何かを持って部屋に
入って来た。
何だか旨そうな匂いがする。
「今日の調理実習でカップケーキ作ったんだけど
...食べ ない?」
「は?別に腹減ってねぇし。」
「そっかぁ。じゃあ勉強が終わってお腹が空いたら
食べて。」
そう言って女は机の端にその旨そうな"カップ
ケーキ"とやらを置いた。
「じゃあね。」
言いながら部屋から出ていく。
トントントンと階段を下りる音が小さくなった。
そこで急にご主人さまはそのカップケーキを持って
立ち上がる。
「あ"ー!!!!何であんな態度とってんだ俺!?」
───そんな叫びが部屋に木霊した。
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