マリアの誘惑

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「ごめんねぇっ…」 玄関先で泣き出したその人を僕は慌てて部屋に 引き入れた。 悪気がないのはよく分かってる。 だけどこんな悲哀を帯びた泣き声をご近所さんに 聞かれた日には、明日から噂話の的になるのは目に見えていた。 はらはら…って形容詞が一番しっくりくる。 名は体を表すとはよく言ったもんだ。 あの聖母マリアと同じ名前の真理亜さんは、文字 通りはらはらと儚い姿で涙を流してる。  美人は何をしてても美人なんだなぁと、一瞬場違いな考えが頭を過ぎった。 …いけない。 見惚れてる場合じゃない。 何とかここから追い出さなくては。 「嫌なところがあったら直すからっ…」 「いや、真理亜さんに嫌なところがあった訳じゃ なくて」 「だっていきなり、もう遊びに来ちゃ駄目なんて 言うからっ…」 真理亜さんはこのマンションのお隣さんだ。 水道管が壊れてあたふたしてたのをたまたま見つけて、いろいろと助けてあげたのをきっかけに仲良くなった。 それ以来、真理亜さんはよくご飯を作りに来てくれるようになる。 お互い一人暮らしだし、決して料理は得意じゃない僕の部屋に遊びに来てくれるのは正直有り難いの だけど、一つ問題があった。
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