Act.1 神山玲二という男

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「じゃあ、明日は8時に迎えに来るから。」 夕飯を食べて、洗い物を終えてキッチンを出ると 玲二はソファで明日の映画の撮影の台本を読み 込んでいた。 車のキーを鞄から出し、玄関に向かう廊下の途中で 突然後ろから抱き締められる。 「泊まっていけばいいだろ?」 「無理。」 耳許で甘い声を出すのは、心臓に悪いから やめて欲しい。 しかもそんな危ない台詞。 「何もしないから。」 …今抱き締めているのは、どこの誰だと言いたい。 「こら。 あまりマネージャーを困らせないの。」 彼の脇腹を軽くつねると、諦めたのか腕を 離してくれた。 振り返ると、まるで捨てられた仔犬みたいな 瞳をした玲二。 ...その顔は反則だ。 「今日はゆっくり休んで。 また明日、お休みなさい。」 そんな彼をほっとけなくて、玄関を出る前に優しく 頬を撫でると、彼ははにかむように微笑んだ。    いつも自分からはたくさん触れてくるくせに こうやって私から触れると、まるで少年みたいな 反応をするんだから。 玲二はよく分からない。
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