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「じゃあ、明日は8時に迎えに来るから。」
夕飯を食べて、洗い物を終えてキッチンを出ると
玲二はソファで明日の映画の撮影の台本を読み
込んでいた。
車のキーを鞄から出し、玄関に向かう廊下の途中で
突然後ろから抱き締められる。
「泊まっていけばいいだろ?」
「無理。」
耳許で甘い声を出すのは、心臓に悪いから
やめて欲しい。
しかもそんな危ない台詞。
「何もしないから。」
…今抱き締めているのは、どこの誰だと言いたい。
「こら。
あまりマネージャーを困らせないの。」
彼の脇腹を軽くつねると、諦めたのか腕を
離してくれた。
振り返ると、まるで捨てられた仔犬みたいな
瞳をした玲二。
...その顔は反則だ。
「今日はゆっくり休んで。
また明日、お休みなさい。」
そんな彼をほっとけなくて、玄関を出る前に優しく
頬を撫でると、彼ははにかむように微笑んだ。
いつも自分からはたくさん触れてくるくせに
こうやって私から触れると、まるで少年みたいな
反応をするんだから。
玲二はよく分からない。
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