Act.1 神山玲二という男

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「相手の女の子を翠ちゃんだと思ってやって みたらー?って。」 目の前ではやっぱり見とれてしまうくらい 綺麗で情熱的なキスシーン。 唇が離れた瞬間にカットの声がかかる。 そこで相手役の女の子が、玲二のキスで腰を ぬかしてしまったのか、真っ赤になって膝から 崩れ落ちた。 「ちょっと待って下さい! なんで私なんですか!?」 私はつい声が大きくなってしまう。 それを見たKENさんは面白くてしょうがないとでも 言うような顔をしている。 「翠ちゃんって綺麗で仕事もできるのに 鈍感さんよねー。」 「鈍感って...」 「相手役の人を好きな人に置き換えてやれば キスしやすいじゃないって話よー!」 そこで頭の中に浮かんだのは... 昨日の玲二の言葉。 自分の願望─── 相手を置き換えて─── 翠に言われると恥ずかしい───。 「いや、まさか。 確かに玲二は私になついてますけどそれは恋愛対象 としてではなく、お母さん的なものですよ。」 「あらま、玲二ったら可哀想にー。」 KENさんの言葉に、さっきのシーンが蘇ってくる。 強く抱き締めて、ちょっと強引に後頭部にまわす手。 噛みつくようなキス。
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