Act.1 神山玲二という男

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「翠」 楽屋に入ると、さっきとは別人のように 微笑んだ玲二が、私を待ち受けていた。 相変わらず変わり身が早い。 「お疲れ様。 ...って、ちょっと大丈夫?」 いきなり抱きついてきたかと思ったら、私の首筋に 顔を埋めるもんだから、どこか具合が悪いのかと 心配になる。 柔らかい髪がふわりと触れてくすぐったい。 「さっきの...しつこかったから疲れた。 充電させて。」 「いつから私は玲二の充電器になったっけ?」 最近忙しくて、なかなか1日オフを作ってあげられ ないから、風邪でもひいたのかと心配したのに。 「今日の翠は意地悪だね。」 「当たり前。 もぅ、たまには共演者と飲みに行ったらいい じゃない。飲みにケーションも大事よ。」 「女とはめんどくさい。 アピールばっかりしてきて芝居の話できないし。」 「めんどくさいかもしれないけど、付き合いも大切な仕事でしょ。」 急に顔を上げたと思ったら、その整い過ぎた 綺麗な顔で真剣に... 「翠と過ごす時間の方が大切。」 とか言ってしまう彼は本当に困ったやつだ。
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