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「翠」
楽屋に入ると、さっきとは別人のように
微笑んだ玲二が、私を待ち受けていた。
相変わらず変わり身が早い。
「お疲れ様。
...って、ちょっと大丈夫?」
いきなり抱きついてきたかと思ったら、私の首筋に
顔を埋めるもんだから、どこか具合が悪いのかと
心配になる。
柔らかい髪がふわりと触れてくすぐったい。
「さっきの...しつこかったから疲れた。
充電させて。」
「いつから私は玲二の充電器になったっけ?」
最近忙しくて、なかなか1日オフを作ってあげられ
ないから、風邪でもひいたのかと心配したのに。
「今日の翠は意地悪だね。」
「当たり前。
もぅ、たまには共演者と飲みに行ったらいい
じゃない。飲みにケーションも大事よ。」
「女とはめんどくさい。
アピールばっかりしてきて芝居の話できないし。」
「めんどくさいかもしれないけど、付き合いも大切な仕事でしょ。」
急に顔を上げたと思ったら、その整い過ぎた
綺麗な顔で真剣に...
「翠と過ごす時間の方が大切。」
とか言ってしまう彼は本当に困ったやつだ。
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