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黒いタイルに黒い浴槽。
「寒かったな」
お湯の中で雪哉に座るような形で肩まで沈んでいる。
背中から回される指が真琴の乳首を押さえたりつまんだりしていた。
身をよじるたびお湯が揺れて入浴剤の香りが広がる。
「ゆき…や…」
「たまにはのんびりあったまろうよ」
「のぼせる…から」
「だろうね」
真琴の懇願は聞いてもらえない。
頭がくらくらして気持ち悪くなってきた。
どうして雪哉は平気なのかわからない。多分自分より体が冷えていたからの時差だろう。
そんなことはどうでもいい。
「はなして雪哉」
浴槽のへりをつかんで立ち上がろうとするが腰に回された腕が邪魔をする。
「ゆき…ホントにもう…」
もう限界なのに、後ろ向きに姿勢を変えられて突然後ろから強く挿入された。
「‥あっ…!」
浴槽のへりに手をのせて体が沈んでいかないように自分を支えるが、後ろからの突きにすべって溺れそうになる。
「ホントに…吐きそう…」
「吐けば?」
雪哉は不敵に笑って真琴に頭から冷たいシャワーを浴びせる。
胃の不快感が限界に来て、真琴は黒いタイルの床に嘔吐した。
食べていなかったのでほとんど水分だが、シャワーの流れで嘔吐物が排水溝に流れていくのを見てまた吐き気がこみあげてくる。
「う…くっ…‥ん…」
その間も雪哉は動きを止めてくれなかった。
「俺に従え、真琴」
ぼんやりした頭に雪哉の言葉が響く。
脱力した体でかすかにうなずくと、動きを止めて耳元まで顔が近づいてきた。
「…聞こえないよ真琴。俺の言うこと聞く?」
限界が来て沈みそうになる真琴の体をすくい上げて雪哉は浴槽から出た。
水のシャワーを浴びせられて力なく自分の腕の中にいる真琴に征服欲を刺激されて満足する。
急いで体を洗いながら壁にもたれて座らせている真琴をちらっと見る。
完全に意識がないのか、ぐったりしている体は動く気配がなかった。
「‥ゆき…や…」
眠っていると思っていた真琴が口を開いた。
「なに?」
「僕を、殺そうとしたの?」
まっすぐ自分を見上げる真琴の頬に水を吸った髪がついている。
「どうだろうね」
雪哉の言葉にわからないという風に首をふって真琴はうなだれて目を閉じた。
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