ラブレター

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胸が締め付けられるって正にこういうことなん だろう。 彼の本音に教師の私は“ごめんね”しか言えない。 「今の古典の先生の授業もちゃんと受けて あげてね。」 教師と言っても所詮、雇われた身。 自分の行きたい学校で教えたい生徒にだけ先生を していられる訳じゃない。 異動は突然やってくる。 こちらの気持ちなんてお構いなしに。 とっくに次の先生に引き継いでいたのに、こう やってなかなか荷物を取りに来られなかったのは 私の未練だ。 でも、もう教室にも職員室にももちろん下駄箱にも私の荷物は残ってない。 だから、今日でこの学校へ来るのは最後。 「さよなら。」 後ろ髪を引かれる思いで彼の横をすり抜けると ふいに腕を掴まれた。
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