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毎週金曜日の夜、彼は明かりを消してあの部屋で待っている。
彼の部屋は夜になると物の輪郭が僅かに見えるくらいぼんやりとした明るさしかなくなってしまう。
俺は渡された合鍵を使ってそっと中に入る。
そして夜の闇に紛れてベッドで待つ彼を抱くのだ。
抑えきれない情動、狂おしいまでの劣情。
俺は彼の事が好きだ。愛している。
だけど彼は――。
三年前両親が事故で亡くなり、両親がやっていたパン屋を兄が引き継いだ。
元々兄は両親の手伝いをしたりパン作りを両親に習っていたし、元来器用な兄の事だからさして問題はないように思えた。
だけど現実はそんなに甘くはなく、パートさんはそのまま働いてくれたもののただパンを作っていればいいというわけにもいかず、経営者としての仕事も加わり体力的にも精神的にも段々と疲労が溜まっていっているように見えた。
そんな兄を見て、俺は高校卒業と同時に兄を助けるべくパン屋で働く事に決めた。
兄は最後まで進学を勧めたが俺にだってできることはあるはずで、兄ひとりに苦労を押し付けるつもりはなかった。
あれから俺も段々仕事にも慣れてパン作りの手伝いと商品管理、販売と色々な事が任されるようになっていた。
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