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私の神様は、神保町にいる
深夜のオフィス街を一人で歩いていると……無性に寂しい気持ちになる。
空を見上げると、ビルの隙間から見える墨を流したような黒に、白い星々が散りばめられていた。
冬の夜空の星々は……夏よりも光が強いような気がする。
そんなバカなことを考えていると、冷たい木枯らしがぴゅうと吹き抜けて体を強く叩いた。
手にぶら下げたコンビニの袋がかさりと小さな音を立てる。早くこれを持って、会社に戻らないと。
時刻は深夜ニ時、終電の時刻はとっくに過ぎていた。
そんな時間になぜオフィス街をうろついているのかと言うと、私……高梨雪が編集者だからという一言に尽きる。
大きなビルの裏口から入って、顔なじみの守衛さんにぺこりと頭を下げる。
自分も人に言えた口ではないけれど、毎晩本当にご苦労様だ。
エレベーターを使って四階に上がる。扉が開くと人気のない廊下に、最低限の明かりだけが灯っていた。
……ちょっとホラーみたいなシチュエーションだな。怖くなるから、あまり考えないようにしよう。
『アニメ化決定!』、『進藤先生、期待の新連載開始!』なんて文言が飛び交うパネルやポスターが散りばめられた廊下を歩き、『会議室A』と書いてある扉の前に立つ。
そして深呼吸を数度してから、その扉をノックした。
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