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漫画家と編集者……時々起きる組み合わせではある。
進藤先生は私の好みである薄めの顔のイケメンだし、ありかなしかで考えると……あり寄りのありだ。
だけど揉めたりしたら、業務に支障が出るしなぁ。
それがあって、私は進藤先生の気持ちに気づかないことにしている。うん、私は気づいていないのだ。
進藤先生は大事な看板作家なのだ。迂闊なことをするわけにはいかない。
「……ね、高梨さん。トーンが残り十五枚なんですけど」
ふと。進藤先生がそんなふうに声をかけてきた。
うちの原稿は表紙込みで三十二枚。半分の坂はもう越えたらしい。
「わぁ、あと半分ですね! お疲れ様です!」
あちらの気分を盛り上げようと、ことさら明るい声を出す。
だけど進藤先生は……それに芳しい反応を返さなかった。
「……先生?」
「これ、このまま放置したら……困ります?」
上目遣いにそんなことを言われ、私は絶句した。
困る、それは困る。トーン無しでも掲載はできるだろうけれど……上司に確実に怒られるし、読者の反応も怖い。
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