私の神様は、神保町にいる

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 漫画家と編集者……時々起きる組み合わせではある。  進藤先生は私の好みである薄めの顔のイケメンだし、ありかなしかで考えると……あり寄りのありだ。  だけど揉めたりしたら、業務に支障が出るしなぁ。  それがあって、私は進藤先生の気持ちに気づかないことにしている。うん、私は気づいていないのだ。  進藤先生は大事な看板作家なのだ。迂闊なことをするわけにはいかない。 「……ね、高梨さん。トーンが残り十五枚なんですけど」  ふと。進藤先生がそんなふうに声をかけてきた。  うちの原稿は表紙込みで三十二枚。半分の坂はもう越えたらしい。 「わぁ、あと半分ですね! お疲れ様です!」  あちらの気分を盛り上げようと、ことさら明るい声を出す。  だけど進藤先生は……それに芳しい反応を返さなかった。 「……先生?」 「これ、このまま放置したら……困ります?」  上目遣いにそんなことを言われ、私は絶句した。  困る、それは困る。トーン無しでも掲載はできるだろうけれど……上司に確実に怒られるし、読者の反応も怖い。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加