落とし物

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「…何で、俺と目を合わせないの」  一瞬そのオバケとのことだと思ってしまった。思わず肩が痙攣する。 「俺、何しちゃった? ちゃんと話して」  あーちゃんへと、視線を向けた。ぁあ確かにあーちゃんと向き合うのは久し振りかもしれないと感じた。  私はあーちゃんを避けていたのだろうか…?  自問しながら、悲しそうなあーちゃんの表情が、私の胸を素直に締め付ける。あーちゃんの笑顔を取り戻したかった。 「違うの。何でもないよ」 「ちゃんと言って。俺、若菜とギクシャクするの、嫌だ」 「ごめん…でも私、自分ではそんなつもりなくて」  ボタボタと、小さな黒い丸い埃がまた、落ちた。  つい、そちらへ視線を向けてしまう。 「若菜」  一つではない。  二つでは、終わらない。  三つ、四つ、…あーちゃんからどんどん溢れ落ちていく。 「若菜は、前川が良いの?」  のそりと起き上がりながら、オバケたちは一斉に私を睨む。  そして、ゆらりと腕を伸ばし始めた。  それぞれから伸びる細い腕が、獲物を狙う触手のようだ。 「俺のことは」 「ッッ!」  私は初めて、あーちゃんの手を払い退けた。  私は初めて、あーちゃんからはっきり目を逸らした。  そして、あーちゃんから、逃げた。 「若菜ッ!」  何であーちゃんが、私を?  あーちゃんが、私を…?    *   *   *
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