ツッコミの神さま

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 「叶てやるか、叶えないべきか。しかし叶えないとなると、出雲大社に参拝したのに出逢いがないと愚痴るだろう。それでは出雲大社のメンツが丸つぶれだ。参った......」  「あ、そうだ。折角だから、おみくじ引いていこう!」  あかりはおみくじの売店で、三百円を払うと、おみくじを一つ買った。  「なんか、すごくいやな予感がするんだが......」  「末吉かぁ、大吉じゃあないのか。ついてないなぁ」  「いやな予感が秒で的中しおった! ここは怒っとこう! 神埼あかり!」  「なんだろう、今、だれかわたしの名前を呼んだ?」  「呼んだわっ! よく聞けよ。おみくじは神さまのことばだ。おみくじにケチをつけるということは......」  「気のせいか。もう一回おみくじひこう」  「ひとの話を聞けよ! そして引きなおすな! おみくじはドリームジャンボじゃないんだぞ! あたりが出るまで引くつもりか」  「やっぱり大吉がいいなぁ」  「吉に大小は関係ないっ! てなに言わしてんだ! おみくじに書いてあることをよく読んで人生に活かさんかい!」  いつの間にかノリツッコミしていたことに気付き、神は少し恥ずかしくなった。  「なになに? 恋愛、焦らずに自分を磨くべし? そんなことをしてたら、適齢期過ぎちゃうじゃない」  「お前は、無免許で車に乗ろうとしてるのか? 縁結びを出逢い系サイトと勘違いしてないか? 縁は提供出来るが、恋愛が上手くいくとか、結婚するとかは、己の努力しだいだ。そこまで神社に頼るな!」  「勝負ごと、勝っても失うものあり、て負けてんじゃん!」  「勝ち負けが全てじゃなかろう! 勝つことだけが勝負じゃない」  「失せ物、見つかる。か、最近なにを失くしたっけ?」  「たぶん、その記憶が一番の失せ物ではないか?」  「凶じゃないだけマシか。おみくじ持って帰っとこう」  あかりは再び二礼三拍手すると、出雲大社の本殿を後にした。
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