強く 抱きしめて 18

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強く 抱きしめて 18

* お父さんの会社を後にして、電車に乗って自宅マンションへと帰った。電車の中でも剛さんは特に何も言わず、何となくボクも話しかけるのを躊躇(ためら)ってしまい、お互い無言のまま帰宅した。 リビングに入って、二人掛けのソファに座ると、剛さんは、 「あーーー緊張した!」 と言いながら、締めていたネクタイを外してジャケットを脱いだ。 ボクはそのジャケットを取って、自分も同じように脱ぐと、寝室にあるクローゼットにしまってからリビングに戻った。 「緊張してたの?」 隣に座って話しかけると、剛さんはソファにぐったりと体を沈めたまま、ネクタイを指で緩めながら、苦笑いを浮かべた。 「そりゃあね。さすが大企業の社長さんだ、迫力が違う」 「そう?剛さん全然平気そうに見えたけど」 「そう見せてたの。千都星の前で格好悪いとこ見せられないだろ」 「それ言っちゃったら意味ないじゃん」 「あ・・・たしかに・・・」 ボクがくすくす笑っているのを見て、剛さんはほっとしたように息を吐くと、ボクの頭をそっと撫ぜた。 大きな温かい手で、優しく撫ぜてくれる。 「大丈夫だよ」 「ふぇ?」 「二人とも、千都星のことすごく愛してる。千都星から聞いてた話しだと、全然千都星に関心なさそうで不安だったけど、会ってみたら違ったから安心した」 「え・・・?」 不審そうに首を傾(かし)げたボクの額に、剛さんはその薄い口唇をそっと押し当てて、キスをしてくれた。 思わずうっとりと瞳を閉じてキスを受けて、また瞳を開けた。 剛さんの穏やかな笑顔が、嬉しい。 「二人ともオレのこと凄い値踏(ねぶ)みしてただろ?こいつに千都星を任せて大丈夫なのか、変なヤツじゃないだろうなって、頭の先から爪先まですんごい見られた」 そう・・・なの・・・? ボクから見た感じでは、二人ともボクと会話したくない、見たくないっていう風にしか見えなかった。 「千景さんは最後はオレを何とか認めてくれたけど、お義父さんはダメだった・・・最後まで馬の骨扱いだった・・・」 「そんな風に見えなかったけど・・・」 剛さんは再びソファにぐったりと体を沈めて、天井を仰(あお)いだ。 大きく溜息をつく。 「いや、完全に大事な息子を奪った、くそ野郎って目だった。もっとも、昔会った時からずっとそうだけどね。あーーお義父さんに認めてもらえる自信がない・・・」 「そ・・・そんなことない!!」 ボクは剛さんに覆い被さる勢いで膝立ちになって、必死で言葉を紡いだ。剛さんにだけは、ボクの気持ちを知ってもらいたい。 「剛さんはくそ野郎なんかじゃない!剛さんは、強くて、格好良くって、頼れるし、優しいし、度胸もあるし、思いやりもあるし、だからだから絶対にお父さんも認めてくれるから!」 「くすくす・・・ありがとう」 「本当に・・・ボクは剛さん以外、絶対に誰も好きにならないから」 「くすくす・・・本当にそっくりだな」 え・・? 言われた言葉に意味がわらかず戸惑っていると、剛さんがボクの頬にそっと手を沿わせて、ゆっくりと撫ぜた。 大きな温かい手が、心地良い。 「千景さんの女豹みたいにしなやかで嫋(たお)やかな、誰をも虜(とりこ)にする魅力と、お義父さんの頑固で芯が強くて、でも淋しがり屋なところ、そっくりだよ」 「え・・・?そんなこと・・・」 「大丈夫。千都星は、間違いなくあの二人の子供だよ」 剛さんは楽しそうに、嬉しそうに微笑んで、ボクの頬を撫ぜ続ける。 貴方が・・・そう言ってくれるから。 信じてもいいですか? ボク自身、お父さんの子供なのかずっと疑って生きていたけど。 剛さんの優しさに、泣きそうになる。 大好きな貴方が、信じてくれるから。 ねえ、お母さん、お父さん。 信じてもいいですか? ボクは思わず笑っていた。 剛さんの想いに包まれて、暖かくて、嬉しくて。 そっと、剛さんの顔に顔を寄せる。 ゆっくりと、口吻ける。
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