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強く 抱きしめて 23
普段の他愛(たあい)のない話しから、お父さんとデートした惚気(のろけ)話しとかを聞かされている。
そんな時なボクも負けじと剛さんとの惚気を言うようにしていた。
でも本当にびっくりした。まさかお父さんとお母さんがまた付き合うとは思っていなかったから。
ボクが二人の子供だと証明されて、長年のわだかまりが消えたせいか、ボクが見たこともないくらい二人はラブラブで、いちゃいちゃしている。
本当にこんな風に『家族』になれるなんて思っていなかった。
剛さんとはいつかちゃんと『家族』になりたいと思っているし、なれると信じている。
まだ剛さんのご両親に挨拶に行ってないから、なんとも言えないけれども、それでも剛さんと一緒なら大丈夫だと思える。
剛さんはボクが両親と和解して、連絡を取り合うようになったことを、本当に喜んでくれた。
こうなれたのも剛さんのおかげだから、本当に心から感謝している。
剛さんはボクを幸せにしてくれる。
色んな意味で、ボクを幸せにしれくれた。
だから、今度はボクが剛さんを幸せにしたいと、そう思う。
ボクは大学を卒業して、無事に専門学校に入学して、毎日美味しい料理を作るために勉強して、家に帰ってきたら剛さんのためにご飯を作る。
素直に楽しいと思える。一生懸命何かを得るために勉強することが、こんなに楽しいとは思わなかった。
少しずつ増える知識が楽しい。それを使ってご飯を作って、剛さんが美味しいと言ってくれるのが、嬉しかった。
料理の知識だけではなく、新しい学校では友達もできた。
しかもボクにとっては初めての女友達ができた。
料理学校に通っている人たちだから、もちろん将来は料理人を目指しているので、男女関係なく話しをして、あそこのお店が美味しいとか、家で作った料理とかを話したり、時には恋人の話しをしたりもする。
ボクはほぼ聞き役に回っている。剛さんのことはまだ話せないでいた。こういう事は、他人に話す勇気がまだなかった。
それでも、今まで経験したことのない学生生活が、毎日楽しくて、学校に行くのが楽しくて仕方なかった。
そんな穏やかな生活を送っていた矢先に。
不意に、お母さんから電話が来た。
学校から帰ってきて、夕飯を作っている時だった。こんな早い時間に珍しいなと思いながら、手を洗って電話に出る。
「もしもし、お母さん。どうしたの?」
『ああ・・・千都星・・・あのね・・・』
「仕事中じゃないの?」
『今日はちょっと休んだのよ。病院に行ってて・・・』
「え?!どこか悪いの?!」
病院という聞き慣れない言葉に驚いて声を上げる。
よくよく考えれば、お母さんももう40歳近いんだから、病気の1つや2つかかってもおかしくないんだ・・・。
ボクは不安な気持ちのままソファに座って、スマホから流れるお母さんの言葉に耳を傾けた。
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