一夜の巡り

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一夜の巡り

ああ、あの子は今日も来てくれるのだろうか。 十月三十一日、ハロウィンの日。 私は今日もまた年甲斐もなくあの子を待ち続けていたのだった。 コンコン 家の扉がリズムよくたたかれる。今は午後六時だ。 やはり来てくれたか、と思う。 毎年あの子は午後六時きっかりに、私の家の扉をたたくのだ。 わくわくしながら扉を開く……と、去年より少し大きくなった男の子が立っていた。 黒髪に赤い瞳、と。ヴァンパイアを連想させるその容姿をしている。 いつ見ても変わらない格好に、嬉しさと懐かしさを感じた。 「今日もそんなジャックオーランタンのお面被ってるんだね、おじさん。今年も来ちゃったよ! だから、さ。おじさん、」 明るい笑顔で、何度も聞いたことのある言葉を紡ぐ。 そして、次に続く言葉は必ず…… 「トリックオアトリート!」 そうだ、この子のために毎年こんなにもお菓子を作ってしまうんだ。 この明るい笑顔を、もっと明るいものにしたいから。 だから今年もたくさんのお菓子をあげて、来年も来てもらおう。 きっとこの子のためならば、どんなことだってできるはずなんだ。
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