一夜の残り

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『やあ、少年。まだ名前が分からないからな、こう書くことしかできない。 君がこの手紙を読んでいるであろう時は私はもうこの世にいないのだろう? そうだな、どこから話そうか。 まず私は、君が異形殺しだと最初から分かっていた。 知る人は少ないそうだが、黒髪に赤目の人間は大体ステーク家の人間だからな。 そして最初の仕事は大抵五年後に、というのも知っていた。 だから、こうして手紙を書くことができているんだよ。 まあそれを信じたくなくて、何度も来年を想ったけれど。 ……いざ書くとなると、何を書けばいいのかわからないものだね。 多分、言いたいことは生きてるうちに言っているはずだからな。 そうだ、絶対に言いたい事がある。 何度言ってもいいものだからな。 大好きだぞ、少年。私はお前を大切に思っている。 だからこの大切な日、ハロウィンに大切なお前の側で生涯を終えることができたというのはものすごく嬉しいことだ。 君のためなら何でもできるなんて言っておきながら、最期は結局自分自身のためだったな。 すまない。 私を恨んでくれてもかまわないぞ、きっとそんな死に方をしてしまうだろうから。 ただ、ひとつお願いだ。 出来たら……出来たらでいいから、私のことを忘れないでくれ。 私もずっと、忘れないから。 PS.フランに襲われなかったか? もし何かされたなら申し訳ない。 お前を大好きなジャックより』
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