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「あはは、さすがにいたずらされるのは嫌だからな。今年もお菓子をたくさん作ってみたんだ。おなかいっぱいまで食べて、残りは持って帰ってもいいぞ」
少年を家の中にあげ、いつもの机に座らせた。お茶を用意して持って行く。
彼はもうお菓子にありついていた。美味しそうに頬張ってくれている。
「おじさん、今年もものすごくおいしい。いつもありがとうね!」
「そうかそうか、頑張ったかいがあったよ。そういえばお前は今年で何歳になったんだ?」
「ん~、たぶん十一歳だよ。小学五年生だから」
「もうそんなにおっきくなったのか。初めて会った時は小学一年生だったのになぁ。そろそろ名前も教えてくれよ……。いつもお前としか呼べないじゃないか」
名前も知らない、毎年半日もない私たちの関係。
それでも私にとっては大切で、彼にとっても大切な時間ならなおいいと思った。
「ごめんね、おじさん。まだ教えられないんだ。でも、ね。今日絶対絶対教えてあげるからね……!」
予想外の返答だった。いつもなら、いつか教えるねと言われていたのに。
親がダメだと言ってたからと、絶対に教えてくれなかったのに。
どうしていきなりそんな気になったのかは分からないけれど、やっと名前が知れるというのはもの凄く嬉しい。
そうだ、名前を教えてもらったら、来年のお菓子には名前を入れてみようか。
それがいいかもしれない。もっと楽しい日になりそうだな。
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