一夜の始まり

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「はは、言われてないからなんて随分すごい考え方をしているんだな。じゃあ、どうしてこんな場所に来たか教えてもらえるか? ここは村の中心からは離れているし、誰も来ないと思っていた。実際今まで来る人間は少なくて、来たとしても私に驚いて逃げて行ってしまうし」 「それはねーおいしそうな匂いがしたからなんだ! 電気もついてて、誰かいるのかなって!」 まさか村のところまでお菓子の匂いが漂ってしまっていたとは。 恥ずかしさと申し訳なさが相まって、ものすごく微妙な気分だ。 それでも、それが原因でこの子が私の家まで来ることになったので、恥ずかしさや申し訳なさよりも感謝の気持ちが強く芽生えた。 「そうかそうか。それで……私の家に来て満足はできたかい?」 「うん、大満足だよ! おじさん本当にありがとう!」 「いやいやこちらこそ、ものすごく楽しかったよ」 そう言うと男の子は嬉しそうになった後、少しもじもじし始めた。 ものすごく申し訳なさそうな表情が見える。 「ね、ねえ、おじさん。ぼく、さ。もしよかったら、来年もここに来ていいかな?」 ああそういうことかと思った。そしてこれに断る理由などない。 私の方からお願いしたいくらいなのだから。 「全然いいぞ。私もとっても嬉しい。ぜひ来てくれ」 「やった! おじさん、ありがとう!」 そう言って少年は帰っていった。
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