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少年を見送った後家の中に入ると、そこは静寂に包まれていた。
彼が来る前よりも寂しさが増し、寒さを感じる。
机の上にはまだまだお菓子がたくさんあった。
さすがにあの量をすべて食べたり、持って帰ることは叶わなかったのだろう。
元々あった量の半分以上が残っている。
しかし、食べる気は全然起きてはくれない。
……誰かと話したい。
そう思って私は、とある知人の元へ電話をかけた。
三回ほどコールを鳴らすと、すぐに相手は出る。
『ん、どうしたんだ? ジャック。久しぶりだな』
「ああ久しぶりだな、フラン。いやあ、少し誰かと話したくなってな。今から私の家へ来られないか? お菓子もたくさんあるんだ」
『今からかよ……今日はハロウィンだろ、少しは俺の大切を邪魔しないでくれ』
「それを言うなら、私の大切をもっと大切にして欲しい」
『うぜぇ。まあお前は昔からそうだしな。今年は仕方なく行ってやるよ。それに、少しだけお前に話したいこともあったんだ』
「話したいことはあったのか。それなら最初から了承してくれればいいものを。しかし、ありがとうだな。待っているよ」
『うるせえな、こっちにも事情っつーもんがあんだ。分かってるだろ? ああ待ってろ、一時間くらいで行くから』
そう言ってフランは乱暴に電話を切った。
なんだかんだ言って彼は優しいし、私の良き友だ。
彼が来てくれるというのなら、ひとりの一時間も苦ではない。
お菓子をつまみながら、待つ。
頭では先程の少年のことを考えて。
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