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「それじゃあ、私の話も聞いてくれ」
「おい。人間の話なんて最悪だ。しかもさっきの今でか? 最低だな」
ふっと、フランは鼻で笑う。しかしそんなことはどうでもいい。
話し始めてしまえば、彼は最後まで聞いてくれるからだ。
「それは今日の午後六時のことだったんだ……」
と。私は今日あったことを少しずつ話していった。
お菓子を大量に作ってしまったこと。
小学校一年生の男の子が家に来たこと。
顔を見ても驚かないでいてくれたこと。
お菓子を喜んでくれたこと。
来年も来ていいかと聞かれたこと。
……細かく、自分でも忘れてしまわないように。
たくさんたくさん、話していった。
気が付くと二十四時は過ぎていて、十一月一日になっていた。
お菓子もほとんどが無くなっていて、どれだけの間今日の思い出に浸っていたのかが目に見える。
その間フランは寝ることもせずに、優しく聞いていてくれた。
「フラン、すまない。話し込んでしまっていた」
「いいや、別に。お前の楽しそうな顔久しぶりに見れたからな、それでチャラだ。……でも、警戒は怠るなよ」
「わかったよ。大丈夫だ、私も弱くはないしね」
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