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最終列車で、落しものを拾う仕事をしています。
一日の終わりに、人々が落としていったものを拾い集めるのです。
ほら、あそこ。
「鍵」が落ちています。きっと、閉め忘れてしまったんでしょうね。
あっちの座席の上には「薬」が。大丈夫でしょうか、心配です。
あら。あそこの窓を見てください。あそこです、あの、ドアの隙間。
「彼女の誕生日」が挟まっています。きっと、降りる直前までは覚えていたのでしょう…残念ですね。
これまで、たくさんの落しものを拾ってきました。
本当に、いろいろなものが落ちているのです。
一番多いものですか?
やっぱり記念日は多いですね。「誕生日」「結婚記念日」「付き合って半年記念日…世の中は記念日ばかりですから。
拾ったことがないもの、ですか。
「愛」は見たことがないですね。
まあ、愛の形は多種多様ですから。みなさん、なにかしらの愛はお持ちなんでしょう。
え?なんですか?
「思いやり」や「優しさ」ですか?
意外なことに、それらは滅多に落ちていないのです。
あ、ちょっと失礼。
ポケットからなにか落ちましたよ。
おやおや、これは「恋」ですね。
困りましたね。これがいちばん、厄介なんです。
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