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あれはとても大切なものだ。
無くしてしまうなんて。
そういえば取り付けている紐の部分がちぎれそうになっていた気がする。
気付いた時に紐を取り換えるなりの措置をしておけば良かった、と今更の後悔。
玄関に向かいドアを開ける。
薄暗い廊下。
嫌な熱気が顔を直撃。
廊下に出て探す。
階段を探す。
そうしながらどうやって帰って来たかを思い出す。
薄い記憶を呼び起こす。
確かタクシーに乗り、このアパートの前で降ろしてもらったはずだ。
ということは、タクシーの中だろうか。
何処のタクシー会社だったかまでは覚えていない。
諦めるしかないのだろうか。
しかし、多くの思いが入っている大切なキーホルダーなのだ。
『思ニャン』とは、数年前に流行ったキーホルダーだ。
白と黒のぶち猫のキャラクター。
それ自体はありふれているのだが、一つ特徴があった。
録音機能だ。
猫の後ろに付いているボタンを押すと声や音を録音できる。
といっても、録音できるのはわずか五秒。
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