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好きな人に直接告白するのは勇気がいるので、事前に「好きです。付き合って下さい」などとメッセージを録音し相手に渡す。
思いを猫に託すことから『思ニャン』。
このどこか古臭い方法が逆に新鮮だったらしく、若い女性の間で大ヒット。
一時は品薄になったほどだ。
しかしあらゆる流行がそうであるように一年もしないうちに飽きられ、第二、第三の類似品が出たがどれも思ニャンほどのヒットはしなかった。
晶の所持していた思ニャンにもメッセージが録音されている。
それも一年も前の声が。
『あなたのことを愛しています』
晶の持っていた思ニャンにはその一言が録音されている。
あの時、思ニャンを握り締めていた相手の顔をついさっきの出来事のように覚えている。
酔っていようが、起き抜けだろうが、すぐに呼び起こすことの出来る記憶。
やはり諦めたくなかった。
あれを無くせば、自分の人生を否定されているかのような気さえした。
家に戻りスマホをフリック。
近隣のタクシー会社を探し家の前まで来てもらう。
もう一度、自分がいた場所に戻ろうと考えたのだ。
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