1・工藤晶の落とし物

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 そこにあった。  思ニャンがいた。  まるで天から降ってきたみたいに突然、目に飛び込んできた。  急いで屈み拾い上げる。  少し汚れているような気がする。  無理もない。  こんな所に落とされていたのだから。  小さなキーホルダーを握り締めたら、途端(とたん)に胸が苦しくなった。  悲しみと喜びが打ち寄せてきた。  鼻の穴を広げ、大きく息を吸い込む。  ゴミの臭いが口の中に広がり、思わず咳き込む。  思ニャンをじっと見つめる。  しばらく声を聞いていない。  いや、聞こうとしていなかった。  果たして今も声は残っているのだろうか。  そっと手に取り、録音ボタンの横にある再生ボタンを押す。 『ママ、大好きだよ』    スピーカーから流れたのは、聞いたこともない子供の声だった。
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