5人が本棚に入れています
本棚に追加
そこにあった。
思ニャンがいた。
まるで天から降ってきたみたいに突然、目に飛び込んできた。
急いで屈み拾い上げる。
少し汚れているような気がする。
無理もない。
こんな所に落とされていたのだから。
小さなキーホルダーを握り締めたら、途端に胸が苦しくなった。
悲しみと喜びが打ち寄せてきた。
鼻の穴を広げ、大きく息を吸い込む。
ゴミの臭いが口の中に広がり、思わず咳き込む。
思ニャンをじっと見つめる。
しばらく声を聞いていない。
いや、聞こうとしていなかった。
果たして今も声は残っているのだろうか。
そっと手に取り、録音ボタンの横にある再生ボタンを押す。
『ママ、大好きだよ』
スピーカーから流れたのは、聞いたこともない子供の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!