死神のお仕事

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* 「この馬鹿者がっ」 「はい、誠に申し訳ございません」 私は片膝をつき、深々と頭を下げた。それでも、大死神(おおしにがみ)様の怒りは一向に収まる気配はない。 それもそうだ。今日、私は、とんでもない失態を冒してしまったのだから。 人間の世を訪れる時、死神は黒猫の姿を借りる。私もご多分に洩れずそうだ。 しかし、本日は、猫の習性に負け、赤とんぼを追いかけるのに夢中になってしまった。 そして、つい、自転車の前に飛び出してしまった。 ──本当に情けない話だ。穴があったら入りたい。 自転車は私を避けようとして、乗っていた人間を放り出した。人間は打ちどころが悪かったらしく、お亡くなりなられた。 これに死神たちを取り仕切る大死神様は、ひどくお怒りなのである。何故なら、その人間は死亡者リストに載っていなかったのだから。 死神はあくまでも死亡者リストに載っている人間の魂を狩る。これがモットーである。 何があっても、これを捻じ曲げてはいけない。 「お前の不注意で、人間を死に至らしめるとは。おまけにその人間を勝手に生き返らせるとは。お前は一体、何者か?」 「お言葉ですが、あの人間は、死んで生き返ったのですから、結果オーライなのでは…」 その言葉が、ますます大死神様の怒りを買ったようだ。大死神様の顔が朱に染まる。 「だから、お前は、いつまでも半人前なのだっ」 延々と続く、大死神様の説教を聞きながら、私は、「神さま、お願いっ。私を助けて下さい」と心の中で願うのであった。
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