死神のお仕事

1/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「ねぇ、神様、お願い」 あたしは、目の前の男に懇願した。 黒いローブのフードを目深に被り、黒光りする大鎌を持った、いかにも死神然としたそいつに。 「お願い、と言われましても…」 死神は、少し困ったように言って、髑髏の面を外し、フードを脱いだ。 あ、それって、お面だったんだ、とあたしは感心する。 髑髏の下から現れた顔は、ギリシャ彫刻のように彫が深い、非常に整った顔。30手前くらいの青年だった。 あたしは、思わず、見惚れる。 「私は死神ですから、生死に関わることしか操作できないのです…」 死神は眉根を寄せ、申し訳なさそうに言った。 「そんな、わけないでしょ」 あたしは必死に食い下がる。 あたし、松本(まつもと)(あや)。高校2年生。 ついさっき、飛び出して来た黒猫を()(そこ)ね、乗っていた自転車から派手に放り出された。 そして、打ちどころが悪かったらしく、そのまま、ぽっくり。 今に至る。 死んでしまったのは、運が悪かったと、諦められるよ。 でもね、とあたしは足元にある自分の抜け殻を眺めた。 ──飛ばされた拍子にスカートが捲れ、クマのパンツが丸見えなのだ。 いやいや、ないでしょ。死に際に、パンツ晒すなんて、考えられない。しかも、クマのパンツなんて…。 あたしは、キッと死神を睨みつける。 「生死を操れるなら、ヒューと風を吹かせて、捲れてるスカートを直すくらい簡単でしょっ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!