死神のお仕事

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「そう言われましても…」 死神は、すごく困り顔だ。 「人には、得手不得手というものがありまして…」 「でも、あなた神様でしょ」 問答無用とばかりに、あたしは一喝する。 死神は、しょぼーん、と判り易く落ち込み、それからヘナヘナと地面にしゃがみ込んだ。 「確かに、私は神様なんですけど…。万能の神じゃないし、単なる死神だし。なんなら、みんなに嫌われてるし、それに…」と、どんどん自虐的な言葉を並べ、一人沈んでいく。 あたしは、可哀想になって、死神の肩に手を置いた。驚いて、死神があたしを見上げる。死神は、ウルウルと、目を潤ませていた。 ──しまったっ。あたし、死神を泣かせちゃった。 ひどい罪悪感が心の底から這い上がってくる。 「ごめんね、あたし、自分が死んだことに動揺しちゃって。つい、八つ当たりしちゃった。…あたしは、好きよ、仕事に一生懸命な死神のこと」 耐えきれずそう言って、ペコリと頭を下げた。最後の方は、ほとんどフォローになっていないような気もするが。 しかし、途端に、死神の顔がパーッと明るくなる。仔犬のような愛らしい目であたしを見つめる。ピーンッと真っ直ぐに立った耳や激しく左右に振られる尻尾まで見えてきそうだ。 「そうですよね。誰だって、急に死んでしまったら、動揺しますよね」 したり顔で、うんうん、と大きく頷く。 「それなら…」と、死神は黒光りする大鎌を振り上げた。
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