「昼の光、夜の闇、そして」

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バスを降りたとたん 「あれー!田崎さんちの啓ちゃんでないけ!」近所のおばちゃんだ。 「あー、お久しぶりですー」 「おお、夏休みじゃけ、帰ってきたんね」 「はい!」 「そーかそーか。早よ帰ってやり。お母さん待っとるわ」 おばちゃんにペコリと頭を下げて家に向かった。 明るい昼の光。 遠くになだらかな山並みが見える。ふと<この景色が見たかったんだよな>と思った。 そんなに遠く離れたわけじゃないから、実家のことを「ふるさと」とか「いなか」なんて思ったことはなかったけど、久しぶりに帰ってくると、やっぱりホッとするもんだな。 そんなことを思っているうちに家に着いた。 お土産を渡すと、授業の話なんてすっとばして両親にサークルのことを話し、母さんの中学時代に何かあったのか聞いてみた。 すると、突然母さんの様子がおかしくなった。顔を覆う両手ががブルブル震えてるし、「ごめんなさい」とか「あたしのせいだわ」とか言って、眼も見開いたままで、とにかく尋常じゃない。震えて歯がガチガチいう音まで聞こえてるよ。 父さんが必至でなだめるのだけど、ひどくなるばかり。とりあえず父さんと二人がかりで抱えるようにして病院へ連れて行った。 車の中でも母さんの全身の震えはひどく、うわごとのようにしゃべり続けていた。ろれつが回らないから何を言ってるのかさっぱり分からなかったけど。 病院で鎮静剤の注射を打ってもらい、安静のためその日は一晩入院することになった。
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