「昼の光、夜の闇、そして」

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僕は田崎啓介。今年の春、千葉県の私立大学に入学した。 そして憧れの一人暮らしだ。 「一人暮らしすんの?大事な箱入り息子だったお前にできるのかよ!」 友人たちにはそんな風にからかわれた。 心配性の母だったから、確かに過保護だったかもしれない。 だからこそボクはそれを脱却するんだ。弱音なんて吐くもんか。 高校卒業までは両親と栃木県のU市で暮らしていた。市の中心地ではずいぶん新しいビルが増えてきているけれど、僕たちが住んでいたのは郊外で、まだまだ畑も緑もたくさん残っているのどかな町だ。 父さんは早くに火事で両親をなくし、高校卒業してすぐ働き始めたそうだ。やがて独立してガス器具を扱う店を開き、今はまずまず安定した暮らしをしている。 母さんは父さんと結婚してから通信で高校を卒業し、その後栄養士の資格も取得している。昔の話はあまり話さないが、随分苦労したようだ。頑張り屋だったんだなあ。
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