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「全員揃ってるか? では、試験について説明する」
短く髪をそり上げている先生は、会場に入った途端皆を見渡し、全員揃っている事を確かめると持っていた紙に目を落とし説明し始めた。
「それぞれ事前に申し込み用紙に書いた属性を見せてもらう。まずは得意属性から、自分のできる最高の魔法を用意した的に打ち込んでいってくれ」
そう言うと、それぞれ先生が名前を呼び始めた。
その中にはユノも、そしてルキの名前も入っていなかったため、二人はその場に居座り緊張入り交じりながら的の前に立つ受験生を見守った。
ちなみに、二人に話しかける生徒などいない。
遠巻きに見つめながらもユノを批判する声は聞こえるが、直接言って来る生徒などいやしない。
――いや、生徒はいないが、教師はいたようだ。
遠巻きにされている二人に近づくと、睨むようにユノに視線を送る。
「お前だな? 入学試験前に問題を起こした天才ってのは」
「……?」
この会場にいる先生は二人だ。男と女、そして男の先生がこの場を仕切っていたのだが、その先生が試験の見守りを女の先生に任せ、ユノの前に立った。
「正直俺らはお前に期待してるんだ。だから、お前に対する評価に傷を付けて欲しくない。お前の評価はもはやお前だけの問題ではない、そう自覚してもらわなければ困る」
「それは、どういう……」
「お前は最後にしておいた、俺らも実力は把握しておきたい。せいぜい、全力で挑めよ」
ラヴァから何か事前に聞いているのだろう。それだけ言うとその場を離れ、受験生の出来具合を鋭い視線で見やる。
「だとは思ってたけど、天才なんだな、お前」
「な訳ないだろ、言い返せなかっただけだ。……って、何でそう思ってたんだ?」
「何でって……雰囲気?」
「んだそれ」
軽口を交わし、呆れがちにルキに視線を送る。
(そう言うルキも、相当の実力を持っているだろうに……)
いかなる時も抜け目なく周囲に目を光らせ、軽そうな雰囲気に騙されそうになるが、攻撃をしようと隙を探ったとしてもそんなものは見つからないだろう。
それは公爵家として教育を受けてきたからか、それとも単に彼に元々素質があるからか。
親しみやすい雰囲気は何でも話せそうな気軽さを持っているが、その実些細な事から言葉の裏を見破られそうだ。
ラヴァとは違う意味で、空恐ろしい存在。
「最後のグループだ。呼ばれていない者、前へ」
ルキへ思考を馳せていた所で試験は順調に進んでいたらしい。
今まで呼ばれていないという事は、ルキと同じグループのようだ。
立ち上がったのは五人で、それぞれ数メートル先に的を見透え位置につく。
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