1 俺が、魔王!?

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1 俺が、魔王!?

 それは、とても良い朝の目覚めだった。  いつものように母に叩き起こされることもなく自然に目覚めたユノは、「う~ん」と言いながら伸びをする。  何だか、とても懐かしい夢を見た気がする。懐かしいけれど悲しく、けれども希望に包まれた夢を。  詳細については覚えていないけれど感情が僅かばかり残っていて、奇妙な感覚に首を傾げながらもユノは胸に手を置いた。  だがそれも一瞬で、すぐに立ちあがり勢いよくカーテンを開ける。 「ついに……ついにだ!」  叫び朝の日の光を十分に浴び、朝食を取りに部屋を出た。 「じゃあ行ってきます!」 「ちょっとユノ、ちゃんと忘れ物チェックしたの? あんた忘れ物多いんだから、こんな日にまで大事なものを忘れてたら皆の笑いものだよ?」 「大丈夫、もう五回はチェックした!」  走りながら、ユノは後ろを振り向き母に叫んだ。  まだ時間にたっぷり余裕があるというのに走っているユノに苦笑しながらも、母はユノに手を振った。それに大きく振り返しながら、家々の間を駆け抜ける。 「おうユノ、嬉しそうだな~」 「ああ、今日はあの日だからな!」 「そうか、頑張れよ!」 「ありがとう!」  二階の窓から顔を出した近所に住んでいる冒険者のフーリュが、ユノに声援を送る。その後も走っているといつもより嬉しそうなユノに皆が声を掛け、その一つ一つにユノは応えていった。  ユノはこの街の人気者だ。明るく無邪気で、困っている人を放っておけないユノは、よく人助けをしていた。それは転んだのに手を差し出す小さなものから、無くし物を探したり、ギルドの依頼を受けたまま帰って来ない人の捜索に出かけたり。  そんなユノは当然人々に好かれていて、こうして朝はいつも挨拶のラッシュを受けていた。 「ユノ、良い所に来た! 最近雨が降らなくてな。この畑全体に魔法でバーッと水を掛けてくれないか?」 「了解」  向かう途中にある畑を通ると、帽子を被ったおじさんにそう言われ、ユノは両手を掲げそこから広範囲にかけて水を降らせた。気軽にそれらを行うユノを見て、おじさんは感嘆の音を零す。 「さすがだな、いつ見ても魔法の扱いが上手い! こりゃ、今日の職業適性検査では魔法系に違いねえな!」 「だと良いんだけど!」  笑いながら、再び手を振り走り出す。  そう、今日は待ちに待った職業適性検査の日。この結果の如何によって将来何になるかを決め、その道に合った学校を目指すのだ。  と言っても、通常自分が何に向いているのかは大体の予測がついている。それはほとんどの場合得意な事、例えばユノの場合は魔法関連だろうと予測がつくし、親が農耕をしている人なら遺伝的にその職業が出る事が多い。  それはいわば人生を決める大きな行事、皆浮足立ち教会に集まり、早い時間にも関わらず既にいる友人を見つけ、ユノは肩を叩いた。
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