1 俺が、魔王!?

2/9
前へ
/35ページ
次へ
「よっ」 「ユノ! 珍しいじゃん、こんなに早いなんて」 「だって、悠長に寝てられないだろ、こんな一大イベント!」 「ああ、確かにユノ、前々から楽しみにしてたもんね。日毎にテンションが上がっていく様は面白かったけど……今日はまた、一段とウキウキしてるね」 「当たり前だろ、俺は今日に賭けてるんだからな!」 「賭けてるって、何を――」 「おはよう、ユノ、ザグラ」 「リーレン! おはよう。今日の約束、覚えてるか?」 「もちろん。これが終わったら、一緒に少し時間を作って欲しいって話よね。もしかしたら学校が離れるかもしれないから、忙しくなる前に話したいって。覚えてるわよ、私もユノと話したかったし」  薄い茶髪でまだ少年と青年の間にいるようなザグラの後ろから現れた真紅の綺麗な長髪を持つ女の子、リーレンに、ユノは「なら良いんだ」と笑って返した。 「ちょっと来て、ユノ」  そんな二人の様子に眉をひくつかせたザグラは、リーレンに聞こえないようにユノの肩に手を回し、囁き声でユノに尋ねる。 「まさかとは思うけど……告白、するつもりなの?」 「ああ。もし今日の職業適性検査で、魔法関連の職業を出すことが出来たらな」 「だからあんなに張り切ってたんだ」 「だって、もし学校が離れれば一緒に居れない時間が増えるだろ。そんで、俺の知らないリーレンを見ることになるんだ。そうなるくらいなら、俺は恋人になりたい。そんでずっと、一緒に居たいんだ」  恥ずかしげもなく笑って言うユノに、ザグラは苦笑しながらも背中を思い切り叩いた。そして「応援してる」と激励を送ると、教会を見ながら腕を組む。 「ま、ユノは魔法関連が出る確率高いけどね。この辺りでユノ以上の魔力操作の技術と魔力量を持つ人なんて、いないんだから」 「なに言っちゃってくれてんの、ザグラだって噂されるくらいにレベル高いくせに」 「ユノの影には隠れるよ」  呆れたような視線をザグラはユノに送った。  広大な土地と人々の笑顔が特徴的なここ、ザーナの村は、言ってしまえば何もなく、出て行くばかりの若者を嘆いているような場所である。  そんな中ユノの膨大な力はすぐに村中の噂になって、将来を期待されていた。  それはザグラも、そしてリーレンも同じで、ユノの影に隠れているのだが、彼らの魔法もまたこの辺りでは類を見ないほどずば抜けていた。  そんな彼らだからこそこの職業適性検査の結果も注目されており、先程から彼らを噂する声も絶えない。 「おっ、そろそろみたいだな」 「だね。あ~、緊張する!」 「そりゃ俺の台詞だ。さっきから汗が止まらなくて、どうしようかと思っているくらいだしな」 「ああ……僕はそれほどじゃないから、まだマシってことかな」  ユノを見てザグラは苦笑し、開かれた教会の扉をユノは見る。そこから出てきた神官を眺めながら、ユノは「よしっ」と気合を入れなおした。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加