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「あの平民、何様のつもり? ルキ様に敬語を使わないなんて……ルキ様は公爵家の跡取りよ? それを分かっていないのかしら」
ひそひそと呟かれるのは、ルキに対するユノの態度だ。
貴族だろうとは思っていたが、見るからに平民のユノに話しかけるくらいだ、下級貴族だと思っていた。
それに思わずため口をきいてしまっても怒る素振りは見せないし、あの時と同様今日もまたため口で話してしまっても彼は何の反応も示さない。
なので公爵家の人なんて思わなかったのだが……入って来た情報に驚き、思わず目の前のルキを凝視する。
「ん? 何だ、じっと見て」
「いや……公爵家の人、なの……なんですか?」
「ああ、その事。そうだよ、だが気にしなくて良い。この学園は貴族かどうかなんて関係ないようにされているからな。今更敬語を使う必要もない」
「けど……」
「んじゃ、命令な~。貴族からの命令だ、断れないだろ?」
にやりと勝気な笑みを浮かべ、ルキは逃げ道を塞いでくる。
「分かったよ」
悪い噂は今更だ、なら本人もこう言ってることだし良いかと思い、頷いた。
「にしても、お前の噂凄かったな~。結界に弾かれたんだって? 皆不審がってるけど、お前ってどこからどうみても人間だよな? 確かにどことなく魔よりの気配も感じるけど……いや、そのせいか? とにかく災難だったな~」
背中をバンっと叩かれながらそう言われ、ユノの額に冷汗が垂れる。
魔王としての気配は引っ込められていると思うが、それでも魔の気配が分かる人には分かるらしい。
ルキにも分かっているのなら、もしかしたら最初からラヴァは気づいていたのかもしれない。
職業適性を黙っている事からも、ユノに対して不明な点が多いだろう。
それなのにこの学園への入学試験を受ける許可をくれたのは、それほどユノに期待しているからか。
全属性を扱えるその能力に、魔王への攻撃の切り口として希望を見出しているのか。
逆にこの学園に入学できなければ、ユノの事をどうしてしまうか計り知れなかった。
もしかしたら黒魔法を使える危険人物として監視下に置かれるのかもしれないし、全属性扱える事でこき使われるのかもしれない。
入学したら安心できる生活が、脅かされるかもしれない。
そんな恐怖がせり上がり、ユノの額から冷汗が流れた。
「大丈夫か? 顔、青いけど」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと緊張しちまっているだけだ」
「そうか? なら良いけど……」
心配そうにルキがユノの顔を覗き込んだところで、試験官が会場となっている訓練場に入って来た。
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