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職業適性検査は、十五歳を対象として行われる。
それは教皇によって一人一人に対して取り行われ、挨拶や説明が終わり静謐とした空間の中、皆自分の名が呼ばれるのを今か今かと待っていた。
「ユノ・クリュー」
そして遂に自分の名前が教皇の口から呟かれた時、ユノは緊張で手と足が同時に出てしまいそうになるのを堪え、教皇の前に立った。
「汝、ユノ・クリュー。今ここに立ち、この歳まで無事に育った事に祝福を送ろう。これから先の人生を、自分の選択で、自分の道として歩めるように。汝に、エーノミア様のご加護があらん事を」
そう言って教皇は、ユノの頭に手を乗せた。それは温かな光を放ち、全身に広がるとすぐに消える。手を離されるとユノは頭を下げ、自分の席に戻っていった。
それから次に呼ばれたザグラを見送りながら、ユノはボーっともう見えるはずのステータスを見たいと思いながらも堪え、そわそわと落ち着かな気にその儀式が終わるまでじっとしていた。
「あーっ、長かった~!」
「だね、早く見よう」
儀式が終わると教会の外に皆集まり、見れるようになったステータスを見て騒いでいた。
ユノとザグラもステータスを開示させようと詔を呟こうとしたところで、リーレンがユノの裾を掴む。
「待って、私もいい? 一人じゃ緊張しちゃって」
「いいけど、シーラはどうしたんだ? てっきり、シーラと一緒に見ると思ってた」
「あの子、教会を出ると同時に待ちきれなくて見ちゃったらしくて。だからこの緊張感を共有できないのよ」
「ああ、なるほどな」
遠くで他の友達と話しているシーラというオレンジ色の髪をした女の子が、リーレンの視線に気が付くとばちりとウィンクを送った。それを見てため息をつくと、リーレンはユノらに向き直る。
シーラはせっかちな所もあるため『なるほど』と納得したユノとザグラは、シーラから視線を外し互いに顔を見合わせた。そうして緊張した面持ちのまま、指揮を執ったのはザグラだった。
「じゃあ、一斉のでいくよ……いっ、せーの!」
『ステータス』
三人の声が重なり、ユノは目の前に現れた半透明な板のようなものに文字が書かれたそれをざっと見て、職業について書かれてある所を探す。
「え……?」
そしてそこに書かれてあったものに、思わず声を上げてしまった。
「……嘘」
それは、リーレンも同じだった。
手で口を押えているリーレンを見て、それから唖然としている様子のユノを見て。
「どうしたの、二人とも」
唯一人呑気な顔をしたザグラが、キョトンと首を傾げる。
それぞれの前にあるステータスと呼ばれるものは自分にしか見えず、他の人からは文字の部分がぼやけ、読めないようになっていた。
それには基本的な名前や性別、種族や使える属性についてなど様々な個人的データが載っていて、ユノの視線は職業適性の欄に書かれてある三文字を、頭の中でずっと繰り返し反芻していた。
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