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「ステータス」
ぼそりと呟くと、ユノの目の前にユノの情報が羅列された画面が現れる。
その欄の職業適性の欄を、ユノはもう一度見てみた。
「やっぱり、変わってねえ、か」
少し時間が経った今ならもしや間違いに気づき適切な職業が記されているかと期待した心は、すぐにまた沈み込む。
そもそも、与えられた適性が変わるなど聞いたことがない。これは神の導き、神が間違いを犯すことなどあり得ないのだ。自分の意思で従わないことなら出来るが、この適性は生涯付きまとうことになるのだろう。
先程は心配させぬように無理やり作っていた笑顔を引っ込めたユノは、この先を思い顔を歪めた。そして職業適性に向かっていた視線をその下、属性の欄に向ける。
「原因はこれ、か……」
そしてそれを横目で見ながら、右手を掲げた。
その手から出たのは、黒くて丸い塊だった。それは見続けていると引きずられそうになるような、心がざわつき不快な感情を引き出されるような。
「お見事」
それを手で自在にいじくっていたユノは、いきなり落とされた声に体をビクつかせた。
咄嗟に手のものを消し、その声を振り返る。
「ま、魔物!?」
「残念、違うよ」
「しゃべった!?」
現れたのは、ウルフだった。それも稀少な、エメラルドウルフと呼ばれているものだ。
エメラルドウルフとは、エメラルドが取れる鉱山を生息地にしている事が多いからと、その体の色が正しくエメラルド色をしている事から付けられた名称である。
当然だがその鉱山が近くにないここら辺で見る事はなく、初めて見るそれにユノの体は強張った。
「ああ、別に取って食ったりなんかしないから警戒しなくてもいいよ。何なら姿、変えられるけど」
「え……変えられる、のか?」
「うん。好きな動物を言いなよ」
普通は喋ることなどないはずの魔物だが、それが当然という態度で接せられるとこちらの常識が間違っているような気さえしてくる。
戸惑いつつも逃げ腰になっていた腰を再び下ろしたユノは、「じゃ、猫で」と言ってみた。
「分かった、猫ね」
言った途端、そいつはウルフからすらりとした黒猫に姿を変えた。前足を舐め毛づくろいしている姿はユノの好きな猫そのもので、思わずその体に手を伸ばしかける。
「君は黒魔法を自在に操れる、そうだね?」
けれどいきなり落とされた言葉に、その手がピタリと止められた。
「なに、言ってんだ? 人間が黒魔法を使えるだなんて、そんな訳……」
「さっき操っていたのが黒魔法じゃないなら、何だって言うの?」
何を映しているのか分からない瞳に見据えられ、ユノは言葉を詰まらせる。
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