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「自称探偵を買いかぶりすぎだ。もし、奇跡的にカレンの行動を知っていたとしても、他の人に見られる可能性が高いし、風で散ったら意味ないだろう」
実際、二ヶ所ほど本文が欠けている。
「なら、きちんとゴミ箱に捨てていなかったのは、どんな理由があったというの」
「俺なら、こう推理するな。彼女は彼に手紙を突きつけてやるつもりで、ここで待ち合わせた。だけど、手紙を後ろに隠したまま、渡す前にあっさり誤解だったと判明する。そうなると、この手紙は無用どころか、見られたら普段のキャラと違いすぎて、どん引かれるかも知れない危険物だ。だけど、彼はいつものように手を繋ごうとデートに誘ってくる。さあ、カレンならどうする?」
「……彼に見られないように、後ろ手で手紙を裂いて処分するわね」
「そういうこと。だから、きちんとゴミ箱に捨てられず、周りに散乱していた」
「でも、証拠はないでしょう」
「そこにある」
「そこ?」
あごで示された方にカレンが振り向くと、手紙の差出人と男子が仲よく手を繋いでイチャついている姿があった。
「ずるい! 答えを知ってから推理したのね」
「どっちにしろ、カレンの推理は間違ってただろ」
「くうっ……でも、いいわ。誤解でケンカ別れにならなかったのなら、それで」
「そういうところが、ずるいよな」
「え?」
「何でも。それより、今日の探偵活動は終わりだろう。映画でも見に行かないか」
「それって、ミステリーものを観て勉強したらってこと?」
「いいや、SFもの。俺が観たいだけ。嫌なら、無理にとは誘わないけど」
「む、無理ではないわよ。予定がなくなっちゃったんだもの」
「じゃあ、行くか?」
「ええ、お付き合いしてさしあげますわ」
澄まして答えたつもりのカレンは、破局の危機を心配していたカップルに「恋人関係になるのも時間の問題な二人」と噂されていることなど推理できずに、肌寒い風が吹いていても顔が熱く火照ってしまうのだった。
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