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「で、この紙くずをどうする気だ?」
「もちろん、復元いたします!」
拳を握って張りきるカレンは、バラバラと散らばっている切れ端を集め始めた。
スイッチの入ったカレンを止める、なんて無駄な行為をする気のない麦人は腕を組んで見守っているだけだ。
しかし、白いシャツ袖の腕を伸ばしてゴミ箱の中にあるものまで拾おうとした時には、さすがに止めた。
「全部集めなければ、彼女の気持ちがわかりません」
見知らぬ彼女の気持ちなんてどうでもいい麦人は、しばらくカレンと無言の攻防戦を繰り広げたが、最終的にぽっきり折れたのは、いつものように麦人だった。
「はいはい、俺が拾ってやればいいんだろう」
息を止めて、紙きれ数枚を摘まみ上げると、汚れを払ってから頑固な探偵に渡してやる。
「ありがとうございます」
ご機嫌なカレンは、引き換えにハンカチを渡してお礼を言った。
タオルハンカチとかキャラクターのじゃなく、花模様の刺繍が入ったレースの縁取りな辺りがカレンらしさを醸し出している代物だ。
「なんですの? 使っていない、清潔なものですわよ」
「いや、なんでも。後で、洗って返す。それより、手紙は復元できそうなのか」
「もちろんですわ。ちょっとだけ、待っていてくださいな」
むふふっと自信ありげに笑うカレンは、カバンの中から使っていた透明なクリアファイルを空にして、その中で手紙のパズルを仕上げていく。周りが見えてなさそうなので、麦人は風と人目避けとして丸めた背中側に立っておいた。
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