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「まあ、これは事件だわ」
地面にある紙切れを拾って、英カレンは呟いた。
「どこが事件なんだよ。ただ、ゴミ箱に捨て損ねただけの紙くずだろ」
背後から全否定されて振り返ると、この公園で待ち合わせしていた青山麦人が立っていた。
「あと、今日、ストーカーする予定だった佐藤は、捻挫して家で大人しくしてるってさ」
「ちょっと、青山君。純然たる探偵活動をストーカー呼ばわりなんて失礼な」
「似たようなもんだろ」
「違います。私達は今日、プレゼントセンスが壊滅的な彼を、優香ちゃんが欲しがってる指輪に誘導するという使命があるのよ」
「……うん、俺が悪かった。ストーカーよりも質が悪いんだったな」
妙な訂正と謝罪をしてくる麦人に、カレンはムっとむくれた。
「優香ちゃんと佐藤君には、最大の試練ですのに」
「プロポーズするわけでもないのに、高校生で指輪とか欲しがる彼女もどうかと思うけど?」
「女心がわからない人は、馬に蹴られて首が回らなくなってしまえばいいんだわ」
「馬の使い所が間違ってると思うけど。とにかく、誘導する相手に出かける気がなくなったのは間違いない」
「なら、仕方ありません。今日は、この恋文についての調査に変更しましょう」
そう宣言したカレンは、依頼がなくとも事件に首を突っ込んでいく自称探偵だった。
それも、密室殺人や凶器消失の謎解き、はたまた神出鬼没な怪盗との頭脳戦を欲するのではなく、色恋沙汰に限って好奇心の塊と化す、恋愛探偵だ。
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