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夏季休暇中の佐野山健二は友人の吉野と共にO県北部のK郡へ訪れていた。 農業や畜産業が盛んなK郡一帯は自然に恵まれており、アセロラやスイカの名産地で地元の牛肉は高級肉として扱われている。 レンタカーを走らせて一時間。助手席に座る吉野が代わり映えのしない風景に飽きを口にした。 「海辺を走れば少しは観光気分だが、周りは山ばっかりだな」 「アウトドア好きにはたまらない環境だよ」佐野山はステアリングを軽快に握りしめて答えた。 「ただのど田舎じゃないか」 「お前知らないのか? K村は美人が多い村で有名なんだぞ?」 「じゃあナンパでもするのか? ビーチで同じ観光客の女の子たちと仲良くする方が簡単だって」 吉野が目を瞑り観光客の若い娘たちの水着姿を想像しながら言うと佐野山は含み笑いをして返した。 「実はもう知り合ってる」 「空港にいた子か?」 「違う。こっちの子」 「いつの間に」 「マッチングアプリでね」 佐野山はマッチングアプリでO県の若い娘と知り合い、この日の為にやりとりを行なっていた。 「どんな子?」 「可愛い子だよ。歳の割には大人びた雰囲気でさ。黒髪ストレート」 「お前のドストライクゾーンじゃん」 「まぁ、そんなとこだな」 「観光名所があるから、て聞いてさ。今日はそこに向かってる」 「どこよ?」 「山のふもとに綺麗な場所があるんだってさ。写真も送られて来たよ。木々に囲まれたいい雰囲気の場所だった」 「へぇ」 「なんだよ、反応薄いな」 「お前らのデートに俺が付き合わされてもなぁ」 「大丈夫だって、後で写真見せるけどその子の友達もいるからさ」 「それを先に言えよ」 佐野山たちの車は山道へ向かって行った。
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