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山道を進んでかれこれ一時間。一向に目的地が見えず、佐野山と吉野は道に迷ったのでは、と一度車を停めた。 「本当にこの道なのか?」電子タバコを片手に吉野がスマホと向き合う佐野山に言った。 「そのはずだよ。送られて来たルートはこっちの道で合ってる。もう場所が見えてもいい所なんだけど」 「お前、騙されてないか? タチの悪い奴らにおちょくられてんじゃないの?」 「まさか。だったらこれ見ろよ」 佐野山は吉野に写真を見せた。 スマホの画面には長い黒髪で丈のある白いワンピースを着た女とその友人らと思わしき女性たちが山道に並んで佇む後ろ姿が確かにそこにあった。 しかし、その写真に吉野は違和感を覚えた。 「なぁ、何で皆後ろ向きなんだ?」 写真に映る者全てが後ろ向きで立っていた。これといってポーズをとっている訳でもなく、ただそこに立ち竦むようにいる姿ばかりだった。 佐野山がアプリの女性から送られてきた他の写真も指で弾いて確認すると、顔の映る写真は一つも無く、そこにあるのは山道に佇む髪の長い女の後ろ姿だった。 「確かに、皆、後ろ向きだな。でも、プライベートってのもある訳だしさ……」 佐野山は理解を求めようとするも、吉野が抱いた違和感に薄々と気づき始めた。 吉野は佐野山のスマホを覗き見ながら佐野山を諭そうとした。 「そうだとしても、やっぱりおかしいって。何で皆、人形みたいに……」 吉野が言い掛けたその時、女の声が二人を呼び止めた。
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