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「……先客がいるようですね」
吉野が顔を上げると、白ずくめの女の前で道を阻むように、黒ずくめの女が立っていた。
黒ずくめの女は彫物が装飾された三線を肩に下げていた。
三線の頭にあたる「天」の部位には守り神とされる獅子の彫物が、その天の横に突き出る「範」の部位は神龍の彫物がそれぞれ施されていた。
黒ずくめの女は肩から三線を降ろすと、首の部位「野」を掴むと何かを口ずさみ、ゆっくりと両手で野を引き抜いた。銀色に輝く刃が反り立った。
「何なんだ?」
状況を飲み込めない吉野が言うと、黒ずくめの女は答えた。
「あなた達は今から殺されるところだった。この女は人間じゃない」
「佐野山! 逃げるぞ! おい!」
吉野が佐野山の肩を引いて顔を覗いた。佐野山の顔は蒼白しており、白目を剥いていた。
友人の顔を見た吉野は思わず後退りをした。
黒ずくめの女が、白ずくめの女から視線を外さずに吉野に告げた。
「そいつはもう生気を吸われ始めている。さっさと連れ出してここから逃げるんだ!」
白ずくめの女が叫んだ。
「邪魔をするな!!」
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