5人が本棚に入れています
本棚に追加
いいのだろうか。私のイヤリングでも。
他の方の作品と比べると、すごいものは作っていない。やり方を知れば誰でも作れるような簡単なものだ。期待には応えられないかもしれないし、最悪、展示を楽しみにしていたお客さんを幻滅させてしまうかもしれない。
それでも、いいのだろうか……。
言われるまま、書類に記入していく。その間、及川さんは楽しそうに私のイヤリングを眺めていた。身近な人以外に自分の作ったものを見られる経験がなかったので、ドキドキすると同時に、不思議な高揚感が生まれるのを感じていた。
やってみよう。
及川さんが許してくれるなら、やってみたい。うまくいくかはわからないけれど。それでも、いい。
やってみたい。こんなに胸がドキドキするのなんて、はじめてのことだから。
そんな気持ちがふつふつと込み上げてきた。思わず、ボールペンを握る力が強まる。手のひらには汗をかいているけれど、不安よりも少しだけ、わくわくした気持ちが盛り返そうとしている。
そうだ。勇気を出そう。
この展示は、私の出発点。前に進むための、大事なきっかけ。エデンでならきっといい展示ができる。そう信じよう。
そのために、私はここへ来たのだから……。
そう思いながら書類を書き終える。
すると、及川さんは記入事項を確認しながら、思い出したように言った。
「そうそう、うちの展示には僕ともう一人、審査員がいるんだ。あとでその子にも見てもらうね。まぁ、審査なんて言っても形だけで、今まで来た人を断ったことはないんだけど……」
え。
及川さん以外に、審査員?
そう疑問を顔に出した瞬間、下の階でドアが開く音がした。及川さんと私は同時に一階を見下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!