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『今日さ、時間あったらパンケーキ食べに行かない? 思ったより課題が早く終わってさ、午後から時間できちゃった』
結亜からのチャットの通知で目が覚めた。
昨日はなかなか寝付けず、時刻はもうお昼になっていた。だけれど私はというと、このまま永遠に眠り続けていたい心境で、目が覚めてもまた布団をかぶって二度寝三度寝を繰り返していた。でも結亜からの連絡は無視できない。取り急ぎの返信をすると、スマートフォンを放り出し、ベッドの上で悶えながら何度も同じことを考えていた。
夢だったらよかった。
展示なんか依頼しなければよかった。
どうしてあんなことをしようと思ったのだろう。おこがましいにも程がある。世の中はすてきな作品で溢れているのに、私は何を思い上がっていたのだろう。
結局、傷ついただけだった。
暗い気持ちが心を包む。スマートフォンが何度か震えていたけれど、怖くてどうしても見ることができなかった。
結亜と合流しても気持ちは落ち込んだままで、笑顔を作るのに必死だった。
前から行く約束をしていたパンケーキ屋さんに入る。あんなに楽しみにしていたのに、あまり気持ちが乗っていない。この店に行きたいと言っていたのは私の方なのに、こんな気持ちで申し訳なく思った。
「エデンの作品審査、どうだった?」
注文を終えると、結亜は開口一番にそう言った。
私の報告を楽しみにしていたのだろう。私の返しを待っているその表情は、今までに見たことがないくらいにこやかだ。私はいよいよ笑っていられなくなり、神妙な表情になった。
結愛に展示の依頼をすると伝えた時、結愛はとても喜んでいた。その期待を裏切ってしまうことに罪悪感を覚えた。
「ごめん、私……やっぱりキャンセルしようと思うの。土壇場で、怖くなっちゃって……」
そしてそのまま、昨日あったことを話した。
約束を取り付け、お店に行ったこと。展示作品を見て、感動すると同時に心が折れてしまったこと。中途半端な状態で投げ出して、逃げ帰ってきてしまったこと。情けなくてまた涙が出そうになったけれど、こんなことで結亜に泣きつくわけにはいかず必死で我慢した。
ただ、審査員の男の子に言われた言葉だけは言わなかった。
展示をやめることを誰かのせいのようにはしたくない。やめるのは、私の心が弱かったせいだ。自分の実力がなかったせいだ。彼の言葉は、ただのきっかけに過ぎない。
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