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『ギャラリーカフェ〝エデン〟へようこそ! どうぞ、やすらぎの空間をお楽しみください』
ギャラリーカフェ。結亜から聞いてはいたけれど、聞きなれない響きに少し緊張してしまう。その名の通り、ギャラリーだけではなくカフェも併設しているらしい。
『クローズ』の札が掛けられているドアを押し、そろそろと店内に入る。その先には、夢のような空間が広がっていた。
無秩序に設置された木の机。棚や窓縁に置かれた手作りの人形たち。
ブリキのペンダントライトからは橙の光が落ち、店内を淡く染めている。
本当に、不思議の国に迷い込んだようだった。店内は吹き抜けになっていて、二階まで見渡せる広い空間が心地いい。私ははじめて都会に来た子供のように、きょろきょろと辺りを見渡した。
「いらっしゃい」
声がした方を振り返ると、奥の部屋から男性が顔を出した。
歳は三十代半ば、というところだろうか。その表情は優しげで見るからに温和そうだけれど、顔はどこかのモデルのようにかっこいい。結亜の言っていた〝イケメンの店長〟だ。
私はおそるおそる会釈をした。
「あの……こんにちは。先日メールしました、佐々木、瑞穂です。今日は、よろしくお願いします」
「ようこそ、エデンへ。店長の及川修一です。今日は来てくれてありがとう。さぁさぁ、こちらへどうぞ」
及川さんに先導され、少しだけ階段を上がったところの中二階の席へと案内された。
その席は、一階全体と二階の入り口が見渡せる特等席だった。机の上には〝ようこそ、佐々木さん〟と書かれたウェルカムカードと、小さなウサギのぬいぐるみが置かれている。こんな歓迎を受けたことがなくて、私はもうそれだけで心を掴まれてしまった。
及川さんは、私の頭の中を見透かすようにくすくすと笑っている。
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