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「あ! これが佐々木さんの作品? 見てもいい?」
及川さんは中腰になり、私が持ってきていた紙袋を覗き込んでいる。
はっとして、それを隠そうと手が伸びた。見ないで、という言葉が喉元まで出かかる。何をしているのだろう。及川さんに確認してもらうために今日、準備をして持ってきたというのに。
だけれど私の手が届く前に、紙袋は及川さんの元へと引き寄せられてしまった。
「ふふ。楽しみ。アクセサリーの展示って、うちでは珍しいんだよねぇ」
願いも虚しく、机の上に私の作ったイヤリングが並べられていく。それを見て、鏡も見てもいないのに自分の顔が真っ青になるのがわかった。
小さい頃から趣味で作っているイヤリング。
今までに作ってきた数は数えきれない程で、今日持ってきたものだけでも三十組はある。昨日は夜中まで、時間をかけてひとつひとつを透明なビニールに包装した。昨夜は彼らが、キラキラ輝く私の宝物だった。
なのに今は、これを見るととてつもなく不安な気持ちに駆られてしまう。
こんなすてきなギャラリーに、私の作ったものなんか飾れない。見劣りしてしまう。きっと誰も、喜んでなんてくれない。
どうしよう……。
泣きたい気持ちを堪えていると、及川さんが口を開いた。
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