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その日は結亜が友達と開いた絵のグループ展の日で、私はギャラリーへと見に行っていた。
結亜たちの描いた絵はどれも本当にきれいで、帰り道の間も私は感想が止まらなかった。普段は大人しいくせに、私はすてきな作品を見ると延々と話してしまう癖がある。そんな私をおもしろがって、結亜がふと勧めてくれたのだ。
『個人で展示するのにオススメの場所があるんだ。私がよく行くギャラリーなんだけどね、とにかく室内がかわいいの。不思議の国に迷い込んだような感じ』
ギャラリーなのに?
思わず首を傾げる。私のイメージでは、ギャラリーは作品を見せる場所なのだから館内自体はシンプルな印象しかなかった。
『まぁ、行けばわかるよ。そんなに広くないからはじめての人にも参加しやすい規模だよ。あと、店長がイケメンなの。どう? やってみたら?』
はじめは展示をする気なんかなかった。私は昔から創作活動が好きだったけれど、それはあくまで趣味の延長上で、不特定多数の誰かに見てもらうようなすばらしいものは作っていない。自己満足の創作だ。
ただ、しばらくして私は結亜の提案を真面目に考えるようになった。
それはなぜかというと、展示が私の人生の、ひとつの〝きっかけ〟になるかもしれないと思ったからだ。
「わぁ……」
そのギャラリーは、遊歩道の終点にあった。
まるで太い木の幹のような、円形の建物。木造の壁と周りの木々が一体となって、まるで森そのもののような外観だった。
入り口付近はカラフルなタイル敷きになっていて、その先がどうなっているのかつい覗いてみたくなる。
結愛が言った通りの、かわいい雰囲気だ。走ってきたせいであがった息を整え、ボサボサになったボブの髪を撫でつけた。大きく息を吐くと、入り口の前まで歩を進める。
ドアノブに手を掛けたところで、脇にメッセージが書かれたブラックボードが立っていることに気づいた。
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