砂の目眩

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瀝青の海の露出した地肌 それは白い乾いた砂浜 ザラザラと愛に渇望した 干からびた砂の上 愛し合って死んでいった貝の遺骸が 白い眼を開けたまま静かに横たわっている 残骸ばかりを引き寄せてしまう その白い地肌 青い水が恋しいのでしょう? 海の胸が恋しいのでしょう? 潮騒の息遣いを想うでしょう? 海から離れてしまえば もう二度と触れられないのにね 永遠の砂漠でしょう・・・この場所は・・・ このまま誰にも見つからないで 消えるように風化してゆくのね 同じ色をした空と海に挟まれた どこまでも永劫に干乾びて死んだ 静かな白い砂の上を 重い脚を引き摺って歩いてゆくのね 靴が砂に沈むでしょう? その足はもう動けないのでしょう? 裸足になれば貝殻がその踵を傷つけるでしょう・・・ それでも歩いてゆかねばならないのね 日差しに目眩がするでしょう? 白い残酷な砂塵に巻かれ 瀝青の空、見上げたら目眩 もういいのよ 歩かなくても もう終わりにしましょう 眼を閉じればいいのよ・・・このまま・・・ 幻惑の青い空の下の白い砂の目眩 答えは 夏を終わらせる影を連れてくる鳥だけが知っている・・・
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