昼カノ/夜カノ

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「ねえ、花奈」 お風呂からあがったところに、姉の声。 「今日、バイトに新しい人が入ってこなかった?」 「加藤って男の人が入ってきたよ」 「やっぱり、そうなんだ」 スマホを見ながら、ふんふん頷いている。 「あ、沙奈の知り合いなんだね」 「そうだけど?」 「会うなり、広瀬って呼ばれたから」 男性――加藤って人は、私と姉を勘違いしていたんだ。 部屋のベッドの横に置いてある鏡の前でタオルドライしていると、頭上に姉の顔がひょこんと映る。 三日月の眉。 アーモンドの形をした目に、跳ねるまつ毛。 まんまるな鼻先。 ぷっくりとした上唇。 こじんまりとした耳。 肩にはらりとかかる黒髪。 鏡に映る私の顔に、もう一つ、同じ顔。 顔つきも。身長も。服装も。声色も。 何一つ、変わらない。 「花奈にお願いがあるの」 姉――双子の姉が、私に問いかける。 「?」 「加藤くんのこと、色々聞いてほしくって」 加藤さんは、姉と同じゼミに入った同級生らしい。 「沙奈、その加藤さんって人のことが好きなの?」 目線を上げると、鏡に映る姉の顔がはっとなり、唇をむすんで、頬がりんごのように赤くなった。 わかりやすいなあ。 「好きっていうか、気になるっていうか……」 「はいはい。色々聞いてみるよ」 「ほんと? うれしい〜」 髪をゴシゴシしながら答えると、後ろから抱きしめられた。
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