later scene.1(黒木side)

5/13
前へ
/88ページ
次へ
 ゲームを終了させると、佐野さんは少し怒ったように俺を睨みつけた。 「なに急にサカってんだよ」 「急じゃないです。佐野さんがそんな話するからです」 「煽ってた? 俺」 「……めちゃくちゃ煽ってました」  ぷーっと頬を膨らませると、佐野さんがさも可笑しそうに腕をバンバン叩いてくるので、痛いです、とひっこめた。 「悪い悪い。んじゃ、やるか」  と、すいっと立ち上がって寝室へ向かうので、一瞬、拍子抜けする。  え、やるって、ヤるの? いいの? 真昼間なんだけど。  見えない糸に引っ張られるように、よどみなく歩く佐野さんの後をついていく。  座れ、と顎で示されて、ベッドに腰かける。その俺の脚の間に片膝をついて、腕を首に絡めてきた。 「……言っとくけどさあ」  見上げた佐野さんの頬が紅潮している。 「俺、ちゃんとお前のこと好きだから。――お前は?」 「す、好きです」 「じゃあ、触ってこいよ。……不安になるだろうがよ」  すっごい威圧的に、とろけるような告白をしてくる。 「……馨介」  佐野さんが首を傾けて、唇を重ねてきた。 「ん……」  佐野さんから。――初めて。告白とは正反対に、おずおずと舌を差し入れて、俺の上顎を舐める。そのもどかしさが愛しくて、もっと味わいたかったけど我慢できずに舌を絡める。 「ふ、んんっ……」  合間に漏れる吐息すら可愛い。やがてぷは、と唇を離して、細く整った眉を吊り上げた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1677人が本棚に入れています
本棚に追加